法医学分野

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主任教授
内ヶ﨑 西作

概要

日本の法医学は明治期にドイツから導入されました。ドイツ語では法医学のことを一般人は Gerichtsmedizin(直訳すると、裁判医学)といっています。しかし学問としては Rechtsmedizin(直訳すると、権利の医学)と呼ばれています。導入当時は日本でも法医学を「裁判医学」と呼んでいましたが、ドイツにならった形に名称を変更する際に、「人々の権利を規定しているのは法律」であることから「法医学」と意訳されたと推察されます。一方、英語圏では法医学のことをForensic Medicine(またはForensic Sciences)といいます。しかしForensics が犯罪捜査に関する分析?鑑識と訳されるように、犯罪?鑑識捜査というニュアンスが強く、ドイツ語よりもやや狭い概念になります。とはいえ、ドイツ語?英語に関わらず、裁判や実際の事件?紛争の解決などを目的として研究、そして実務?社会貢献を行う学問と位置づけられています。当教室の英語表記は Forensic Medicine ですが、Rechtsmedizin の姿勢を基盤として「法律や権利における問題」に対し医学そして種々の科学技術を応用して対峙してまいります。

法医学が対象としている事象の中で最も重要なのは「生存権」に関わる問題、つまり死因究明です。死因を明らかにすることは犯罪捜査(死者や被疑者の権利擁護)、保険金支払妥当性の評価(遺族の権利擁護)や公衆衛生行政、医療事故の再発予防、災害予防等に寄与します。具体的には法医解剖や死体検案という業務がそれに該当します。本学の法医学は昭和9(1934)年に創設された国内でも歴史ある教室で、昭和期には多摩地区の法医解剖の一部を担当しておりましたが途絶えてしまいました。その後再開させるために、先々代の遠藤任彦教授が平成7(1995)年に八王子医療センターの敷地内に地上1階?地下1階の法医解剖棟を造られました。しかし残念ながら解剖の再開には至りませんでした。先代の吉田謙一教授時代には八王子の解剖棟を使って1体解剖を行いましたが、あとは西新宿の病理解剖室をお借りして23区内の法医解剖の一部を請け負っておりました。吉田教授退職以降、解剖は行われておりません。30年近くほとんど使われていない八王子の解剖棟を修繕して多摩地区の解剖を再度受諾できるよう、現在準備を進めております。

死因究明の他にも、「安全?安心に生活する権利」が脅かされる「虐待」の診断や「医療事故」の原因分析、過去の事件の再鑑定(人権の回復)なども法医学に求められる重要な責務です。特に児童相談所等から依頼される被虐児か否かの判断は、将来を担う子どもを守る重要な仕事です。当分野ではこのような様々な問題に対して積極的に手を差し伸べてまいります。

病院などで行われている「医療」とは形態が異りますが、生者?死者の分け隔てなく医学?科学を応用し社会貢献を行うのが法医学です。本学学生には、そのような法医学の幅の広さを学んでもらいたいと思っております。

教育内容

主な研究領域(研究内容)

  • 外傷の診断精度の向上に関する研究
  • 虐待診断の向上や予防?背後要因に関する研究
  • 医療事故調査、死因究明の制度に関する研究
  • 法医鑑定、医学鑑定の検証と向上、再鑑定に関する研究

担当科目名名称

法医学

講義概要

法医学の研究は、そのテーマによって病理学、形態学、生理学、遺伝?ゲノム、薬理?毒物学、物理学、心理学、若しくは法学など様々な学問を応用して行います。そういう意味でも、法医学は非常に幅の広い学際的な学問です。大学院では、法医学の基本を踏まえた上で、学生の職種や興味、得意分野などを可能な限り尊重し、それに適した手法を用いて研究指導を行ってまいります。

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